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三重短期大学のこれまでの歩み

　三重短期大学は1952年、勤労学生と女子に高等教育を提供することを目的として、法経科第2部と家政科からなる短期大学として津市によって設置された。その後、高等教育に対するニーズの高まりを受けて、1968年に法経科第1部、家政科食物栄養専攻を増設し、また1990年には従来の「調理と被服」中心の家政科から「生活を総合的に捉える」生活科学科に改編することを経て、現在に至っている。
　本学は法経科（第1部・第2部）及び生活科学科（食物栄養学専攻・生活科学専攻）の二学科、学生定員800名からなる公立短期大学として、学生数の点でも教育内容の点でも全国の公立短期大学のなかで屈指の短期大学として知られており、これまで60有余年の歴史の中で約20,000名の卒業生を社会に送り出し、卒業生はいずれも、政界・官界・実業界をはじめ地域で活躍している。
　本学はこれまでも時代のニーズに即した学科・カリキュラムの改編を通じて教育の現代的再編に努め、また地域問題総合調査研究室による地域問題研究の蓄積や公開講座、施設の地域開放などを通じて地域に開かれた大学づくりをめざすなど、常に時代や地域の要請に応えて自己革新を行ってきた。

高等教育を取り巻く環境の変化

　いま大学に対する社会的要請はますます高まっており、高等教育の果たすべき役割は大きくなってきている。
　21世紀は、新しい知識・情報・技術が政治・経済・文化をはじめ社会のあらゆる領域での活動の基盤として飛躍的に重要性を増す、いわゆる「知識基盤社会」（knowledge-based society）の時代といわれている。「知識基盤社会」においては精神的文化的な側面と物質的経済的側面のバランスの取れた個々人の人間性が重視され、またグローバル化が進むなかで異なる歴史・文化・宗教などを理解し、他者と積極的にコミュニケーションをとることができる力が求められる。また流動的で複雑化した不透明な時代のなかで先見性・創造性・独創性に富み、卓越した指導的人材を幅広いさまざまな分野で養成・確保することが重要となっている。さらに、単に専攻分野についての専門性を有するだけでなく、幅広い教養を身につけ、高い公共性・倫理性を保持しつつ、時代の変化にあわせて積極的に社会を支え、あるいは社会を改善していく資質を有する人材を多数養成することが求められる。こうして高等教育は個人の人格の形成の上でも、社会・経済・文化の発展・振興や国際競争力の確保などの上でもきわめて重要となっている。
　大学は教育と研究をその本来的な使命としているが、現在においては大学の社会貢献（地域社会・経済社会・国際社会など広い意味での社会全体の発展への寄与）の重要性が強調されるようになってきている。教育と研究はそれ自体、長期的観点からの社会貢献であるが、近年では国際協力、公開講座や産学官連携を通じた、より直接的な貢献も求められるようになってきており、教育・研究機能の拡張としての大学開放の一層の推進など、生涯学習機能や地域社会・経済社会との連携を追求することが必要となってきている。
　今では国公私立いずれの大学も社会貢献（地域貢献）を重要視するようになっているが、ことに地方自治体の公的資金により設置・運営されている公立大学にとっては、社会貢献は、まさにその存在理由ともいうべき重要な責務である。地方自治の重要性が増し、地方分権の一層の推進が叫ばれている現在、地域に根ざした地域に固有のさまざまな「知」への要請に応えるために、公立大学の果たす役割りは極めて大きいものがある。公立大学は少子高齢化時代の福祉の充実、生涯学習ニーズの高まり、情報化の高度展開など地域の抱える課題を常に念頭に置いて、地域社会が求める人材の養成ばかりでなく、産学官連携、自治体政策研究、地域の生涯学習との連携などに取り組むことを通じて、地域社会や住民との連携・交流を重視し、市民文化の向上と地域・産業の活性化、地域社会を担う市民の主体的・実践的な教養の育成に貢献することが求められている。

自己点検と社会に対する説明責任

　このように高等教育を取り巻く環境が大きく変化するなかで、いま、大学は教育・研究・地域貢献のすべての面でその社会的有用性を問う社会の厳しい視線にさらされている。まず、教育の面では在学中に学生の能力をどれだけ伸ばすことができたか（卒業時の学生の質は保障されているか）、修学支援・進路支援・キャリア形成支援においてどれだけ学生の要望に応えられたかが問われているし、研究の面では研究活動を通じてどのような成果を上げることができたか（知の創造に寄与したか）、研究活動の成果が教育の充実にどのように反映されているかが問われている。また、地域貢献の面では、研究活動を通じて地域が抱える諸問題の解決にどれほど寄与できたか、研究成果の社会還元は十分か、住民の生涯学習ニーズをどの程度充足したかが問われている。
　今後の大学運営には、大学における自治（自主決定）と社会に対する説明責任とを調和させる、開放的で積極的な新しい自主・自律体制の構築の視点が求められる。
　学問の自由は、いかなる利害や権威からも自由に自律的に教育研究を行う権利であり、高等教育機関たる大学の存立の基礎である。学問の自由が確立されてはじめて大学は知の創造と発展を通じて広く人類社会に貢献できるし、また大学が批判的創造的機能を果たすことこそが社会の健全な発展に寄与する。学問の自由と、それを制度的に保障する大学の自治は、大学がその教育研究活動を通じて社会に貢献することを求めて、国民から特に付託されたものであり、大学は付託にこたえていくためには、みずからの教育・研究の成果を社会の評価にさらしていくことを求められる。大学は社会から付託された資源を最も有効に活用し、絶えず自己革新を行って、教育研究の不断の改善を図り、その社会的責任を適切に果たしていくことが求められている。このように大学自治と社会に対する説明責任とは表裏一体の関係にあるというべきである。
　三重短期大学は、大学の運営において、自主決定を重視するとともに、学外の意見を十分に聴き、社会に対する説明責任を果たすよう努める。三重短期大学は自ら点検・評価に積極的に努め、教育研究の不断の改善を図ることはもとより、より透明性の高い第三者評価を実施し、その評価結果を大学の教育研究の一層の改善に反映させる。
　三重短期大学は、法経科と生活科学科という学科構成の特性、人的資源を活かして、特色ある教育研究活動を展開し、学生や地域社会に対して教育・研究・地域貢献の成果をできるだけ具体的に示すことを通じて、社会から「個性的で魅力溢れる大学」として評価されることを願う。これまでの60年以上の歴史を踏まえて、さらにそれを発展させ、「地域に存在感のあるキラリと光彩を放つ公立短期大学」として、確固たる地位を占めたいと願っている。

三重短期大学の理念

　三重短期大学は、知の創造と継承を理念として、真理の探究とそれに基づく教育により優れた人材を育成するとともに、地域における知の拠点として、広く市民と連携し、協働することを通じて、地域の文化の向上及び豊かな地域社会の実現に寄与する。

１．教育研究の理念

①真理の探究（知の創造・継承・発展）
　教育・研究活動を通じて、人類普遍の真理と真実を追究し、世界の平和と人類の福祉の向上、文化の批判的継承と創造に貢献する。
②優れた人材の育成
　広い分野の総合的な知識と深い専門的学術を教授研究し、豊かな人間性と高い知性を備え、論理的で自主的な判断能力に加え、応用力や実践力に富む有為な人材を育成する。
　高い公共性・倫理性を備え、民主的で文化的な社会の形成に主体的に参画する市民を育成する。

２．地域貢献の理念

　津市の設置する公立短期大学として、地域の諸問題や社会の要請に対応した特色ある研究の推進を図り、その成果を積極的に地域に還元するとともに、高等教育に対する地域のニーズに的確に応え、生涯学習の振興に寄与することを通じて、地域社会に貢献する。

３．大学運営の理念

　真理の探究と知の創造にかかわる、自律性と自発性に基づく教育研究活動を尊重し、促進する。
　大学の自治とは、大学がいかなる利害からも自由に知の創造と発展を行うことを通じて広く人類社会に貢献することができるよう、国民から特に付託されたものであることを常に自覚し、教育研究及び管理運営に関して、主体的に点検と評価を進めるとともに、他者からの批判的評価を積極的に求め、その付託に伴う責務を自立的に果たべく努める。

三重短期大学の教育目標

三重短期大学は、広い分野の総合的な知識と深い専門的学術を教授研究し、豊かな人間性と高い知性を備え、論理的で自主的な判断能力に加え応用力や実践力の富む有為な人材の育成を行う。

●創造性豊かな人間性と優れた専門性を備えた人材の育成
　文化・社会・人間・自然に関する人類の知的遺産を学び理解するとともに、基本的な知的思考能力を育成する。　
●実社会で活躍できる知的・人間的資質を備えた人材の育成
　総合的に考える能力、科学的な思考法、適切な自己表現能力、自主的な課題発見・解決能力など応用力や実践力を育成する。
●地域社会を主体的に担う市民の育成
　高い公共性・倫理性を備え、民主的で文化的な社会の形成に主体的に参画する市民を育成する。
●国際社会に対する理解とコミュニケーション能力や情報社会に対応できる能力の養成
　グローバルな視野と国際感覚を身につけるとともに、コミュニケーション能力や情報社会に対応できるＩＣＴ（Information & Communication Technology）活用能力を育成する。